日本刀の原料となる玉鋼を作るには、まず、粘土で作った炉に種火を入れ、木炭と砂鉄を交互に入れ、三日三晩フイゴで空気を送り続けて燃やします。
このときの温度は高温ではなく、比較的低温で燃やし続けます。
その間、炉の内部の土と木炭が融合し、ケラと呼ばれる鋼の塊ができあがります。
このケラの中から成分により選別し、日本刀の重要な原料である玉鋼を取り出します。
玉鋼は、注出される鋼の中でも最上位の鋼で、たたら製鉄では原料の砂鉄の十分の一以下しか取れません。
そして、一振の刀を打つには10倍の重さの玉鋼が必要となります。
このように、日本刀を作るのために、原料作りにもかなりの手間をかけているのです。
原料となる玉鋼から刀の材料となる鋼を作るためには、玉鋼を鍛える必要があります。
・水へし
水へしとは、玉鋼から堅さ別の鋼の欠片を取り出す作業です。
まず、玉鋼を充分に熱し、大槌で1センチほど厚さになるまで薄く打ち延ばします
その後、水に入れて急激に冷やします。
冷えたら、2~3センチぐらいに小さく割り、選別します。
選別は、玉鋼の中にもゴミや炭素量の偏りがあるため、堅さなどにより何種類かに分けます。
・積み沸かし(つみわかし)
積み沸かしは、選別された鋼の欠片を混ぜ合わせ、鍛接(圧接)することで部分別の鋼を作ります。
テコ棒と呼ばれるへらの付いた棒の先に、異なる玉鋼を目的の堅さや粘りになるように隙間なく積みます。
このとき、玉鋼を和紙で包み、藁の灰と水で溶いた粘土をかけます。
これは、表面の酸化を防ぎ、鍛接を助けるためです。
そして、このテコ棒を火炉(ほど)に入れて焼き(沸かし)、小槌で叩いて鍛接します。
この作業を繰り返し行い、刀の使う部分に合わせた柔らかい心鉄と錬鉄、堅い刃鉄と皮鉄ができあがります。
ちなみに、鋼は炭素分が多いと堅い鉄になりますが、折れやすくなります。
また、炭素分が少ないと柔らかい粘り気のある鉄になりますが、曲がりやすくなります。
・折り返し鍛錬(下鍛え)
積み沸かしでできた堅さの違う塊を再び火炉に入れて熱し、打ち延ばします。
打ち延ばされた長方形の塊の中央部分を切って折り曲げ、重ねます。
再び火炉に入れて熱し、叩いて打ち延ばします。
この工程を数回繰り返すことにより、不純物が取り除かれ、鋼が均等化されます。
そして、何層にもなる鉄ができあがり、ちょうど良い堅さと粘りが調整されます。
なお、折り返し鍛錬の折り返し方で、縦方向を折り返す方法と横方向を折り返す方法があります。
一般的には、縦方向のみか、縦方向と横方向の両方を繰り返して鍛えます。
「折れず、曲がらず、よく斬れる」日本刀を作るためには、堅さや粘りの違う鋼が必要なため、この折り返し鍛錬の回数を調整して、堅さや粘りの違う鋼を作り上げます。
ちなみに、鍛錬を行っているときに、二人の鍛治氏が息を合わせて槌を打ち合うことから「相槌を打つ」と言われるようになりました。